石動乃絵 in 北海道
2年ぶりに北海道を旅した。東京五輪2020のインバウンド需要をあてにして拡張された大阪伊丹空港構内の伽藍堂はとてもではないが各々の旅路を歓迎している姿をしていなかったが、とにかく空港の外では飛行機が規則正しく運行しているし、マスクで顔を防御されたANAのCAは満面の笑みをたたえた目で搭乗する客をもてなしていた。
札幌市内は蔓延防止等重点措置を根拠に、イスラム圏めいた禁酒命令が布告されていると小耳にはさんでいたので、新千歳空港に降り立ってすぐ旭川へめがけて舵を切った。
関西を含むこの時期の西日本は鬼のような雨雲が流入し続けていて、そこでは梅雨明けの鍛えられた我々の体すら容赦なく蝕む強烈な湿気と連日の暴風雨に襲われる有様だった。一方、北海道旭川は、頭上にやんわりとした薄雲と、そのヴェールに包まれたやさしい太陽と、カラッとした大陸のような涼しげな風が大地をやさしく撫でるような幸福に満たされていて、本当に良かった。
これは旭川駅構内にあった謎のオブジェ。人間のやることはよくわからない。
旭川ときいてピンとくる人がいるかもしれないが、この街は日本から遠く離れた奉天・旅順に存在した日露の激戦地帯へ遠征した大日本帝国第七師団の本拠地として機能していた。
俗にいう軍事都市だ。
北海道はロシアとの綱渡りを繰り広げた軍人や、アイヌの人々が育てた土地なのでどこか異国情緒がいまだに存在していて、哀愁が漂う、ような気がする。
やはり例の漫画も、活躍していた。
実はこの街には山頭火という有名なラーメン・チェーンの本店がある。
来てから偶然発見した。こういうことがあるので、旅は楽しい。京都の旧三条店は残念ながら京阪駅前の再開発の最中に消滅してしまったことで長らく山頭火をご無沙汰だったので妙にうれしかった。店内はブラジル人を連想させる異国の男女が一生懸命に接客していた。
2日目に、北見・網走に向けて舵を切った。旭川から4時間程度の電車の旅路。
途中の駅に上川や留萌、遠軽、留辺蘂といった面白い地名が並んでいた。
こちらはさらに冷涼な気候を湛えた土地なので、本当に快適だった。
北見市内は一見さびれた気配があったが駅からちょっと歩いた先にある廃墟めいたアーケードの中には繁盛した寿司屋やラーメン屋、居酒屋が点在していて、ふしぎな街だなと思った。
北見市内から1時間ほどバスに乗って、温根湯という寒村にキタキツネとたわむれに行った。
かわいいね。
ゴールデンカムイによると、キツネは食べられるらしい。
キツネ村から撤退した帰路で、柵に覆われた畑を監視していた犬にめちゃくちゃ吠えられた。
こちらから犬が見えなくなるぐらい遠くへ逃げたのに、柵の向こうからずっと吠え続けていたので狂気を感じた。
おそらくキツネの匂いが、私の身体に付着していたのだろう。
2日目は北見から1時間ほどかけて網走へと行った。
網走はシンエヴァの最後のシーンを彷彿とさせるような田舎の海の街という情緒があって好感度が高い。
レンタサイクルでいろいろめぐってみたいなとおもったが、残念ながら駅前にレンタサイクル屋はなかった。
そのまま当初の目的である網走監獄博物館へバスで行った。
進撃の巨人にでてくるような巨人が湯舟につかっていた。
ゴールデンカムイの聖地なので、缶詰のアザラシカレーとか、食べられるオソマとか、愉快なお土産が並んでいたのが良かった。
オホーツク地方で2日ほど滞在したあとに、バスで札幌駅まで直行し、そのままANAで関西へと帰った。
大阪伊丹へ降り立った時の、あの湿気と雨にはげんなりさせられた。
日本人は、夏の北海道に疎開するべきだと思う。