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serial experiments lainはわからないんだけど

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 lain全話の中で最も印象に残っている話は、玲音の姉である岩倉美香が恐慌の末に自我が崩壊してしまう第5話だ。これはlainの世界観がいわば爆発した回で、エヴァでいうところの第壱話に相当すると思う。自衛隊が使徒相手にN2爆弾(その描写から、この爆弾は原爆をモデルにしているのだと思う)を投下、爆撃したが使徒相手には全然効果がなくて、悠然と佇んでいるあの姿を移したカットの次に、なんだかなよなよして頼りない中学生碇シンジが乗員しているエヴァ初号機がやってきて、よくわからない暴力で使徒をコテンパンに倒してしまう話だ。要するに、これはとんでもないアニメだな、と読者にアピールするのに十分な時間と描写を提供したのがエヴァの第壱話であり、lainの第5話なのだと思う。

 lainという作品を覆うあの虚無感は良い。教室でのさりげない学友たちの会話にも、玲音の家族の食事風景にも、玲音がNAVIに向き合うときにも、うっすらと、だけれど確実に死の芳香を感じ取ることができて、メランコリックだけれどどこか甘美な気持ちを私達視聴者に提供している。だから、玲音が雲の中から救世主、或いは神のように出現しても、美香が執拗な「呪い」の言葉に追い詰められて精神が摩耗してしまっても、そこにはやはり死の雰囲気があって、その雰囲気が現実世界とのワイヤード、そして玲音自身をうまく接続している。なお、この超常現象の出現以降、あからさまに、現実世界とワイヤード、そして玲音との曖昧な関係が描写され始める。

 岩倉美香は何者だったのだろう。lainの家族は虚構だったのだけれど、美香自身はそれが虚構だと気が付いていなかったように思う。彼女は玲音が何者か知らなかったし、自分自身を襲う理不尽な「呪い」に、なすすべもなく壊れてしまう。物語の後半、モデムとなってしまった彼女が描写されるのだけれど、彼女は一体「何」と「何」を繋ぐモデムとなってしまったのだろうか。実のところ、彼女の根本的な部分に関する描写は一切なされていない。もしかしたら、彼女自身がこの物語を効果的に演出するためのツールに過ぎなかったのかもしれない。