読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

WatchMeをインストールされたハーモニーおじさんの健康的な肉体

f:id:Isurugi_Yoriharu:20160427214553j:plain

※以下ハーモニーのネタバレがあります

 

 生命第一主義の社会に反発するため自らの命との決別を試みた御冷ミャハと霧慧トァンの二人の少女の人生は、生死の境界からの帰還後それぞれ全く異なる方向へ大きく舵を切ることとなる。御冷ミャハはWatchMeを用いて世界中の人間の命を人質に取り、人々の生きる社会に対する真の反逆者へと堕落したが、一方その頃、霧慧トァンは生命主義に表向きは順応し、裏では姑息かつ矮小な形で反抗を行っていた。面白いのは、霧慧トァンはその生き方を「御冷ミャハが生きていたら辿っていたであろう道をただなぞるだけの、ドッペルゲンガーのような人生」と評していて、彼女は御冷ミャハのことをそれほど良く理解しているわけではなかった点である。ただ彼女は自分の知っている御冷ミャハの亡霊に縛り続けられ、おとなのからだのまま精神的ルサンチマンとなり、戦場で”破廉恥”な行為を行い続けていた。

 霧慧トァンの凡人性はどこか私たちの心をくすぐるものがある。カリスマの美少女に見染められ、己の生きる道を気付かぬうちに彼女に縛られ、多少は賢くなったけど根本的に救いようのない人生を生きていて、勇気は持ったけどそれを善の道に使うことができない。だけれど、御冷ミャハにかつての親友を殺されたことに対する怒りが、彼女に世界を救う勇気を持たせることになる。ハーモニーが多くの人々の心をつかんだのはそのあたりではないだろうか、とふと思った。

 ところで人の心は早々変わらないものである。多くの人々の命を一瞬で奪うテロ行為に対して超然としていた御冷ミャハの心はカフカースの大地でロシア軍の慰みものになっていた頃から何も変わっておらず、はじめから殺人に対して抵抗がない人間だったのだろう。だからこそ親友に対して自死を勧めることができた。

 霧慧トァンは最後に呪いを振り払うことができたのだろうか?

 私は、彼女は物語の最後まで亡霊に取りつかれていたのだと思う。そちらのほうが救いようがなくて、私好みだからだ。