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「天啓」

  1.  

黒のフレームは死を連想する。

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 これは私の友人が指摘したことであるが、「心が叫びたがってるんだ。」は非常に奇妙な作品である。というのも、まず青春譚に最も必要な要素は青少年の成長であるが、主人公と思われる坂上拓実が全く成長をせずまま物語は閉じられている。彼の人間性は終始不変なのだ。成瀬順にピアノの腕前を披露したときも、ラブホテルの廃墟から連れだしたときも、仁藤菜月に告白を決意したときも、何も変わっていない。「心が叫びたがってるんだ。」はまるで坂上拓実を中心に物語が回っているように見える構成となっているにも関わらず。

 物語を駆動させる役目は専ら田崎大樹と成瀬順にあてがわれている。二人はぶつかり合い、そして融解していく。その一連の化学反応は、途中までまるで物語の外野で行われているように錯覚するが、実は坂上拓実と彼ら彼女らの物語は等価に語られているのだ。

 この物語は群像劇だ。変わらない人間と変わる人間がいる。物語の中で人々の思いはサラダボウルに放り込まれ、成瀬順達の思いや城嶋先生の策略によって攪拌されるが、実は思いの衝突の中で不変の人間性を貫き続ける坂上拓実と、目まぐるしく変化する田崎大樹と成瀬順が存在する。仁藤菜月は変わらない人間であろう。

 青春群像劇だが、変わらない青少年と変わる青少年がいる。そこに岡田磨里が伝えたいメッセージがあったのではないだろうか。

 

 そう考えると、truetearsは一体誰が変わって誰が変わっていないのだろうか。