Blame!新装版発売記念

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 この漫画、はじめの数巻はサイバーパンク感が凄まじくて、油に塗れたようなみずぼらしさの、アジアめいた装束の人類達が為す術なく全身黒装束の得体のしれないサイボーグめいたクリーチャー達に虐殺されたり、地下でゾンビ状態で幽閉された女の科学者がいつの間にかクールビューティーなお姉さんに変身して暴れまわったり、建物がぐにゃぐにゃっと変形したと思ったら建物が巨大な妖怪じみたサイボーグになって襲って来たり、なんか凄いんです。だけど、そんな生臭いSFめいたストーリーからドンドン話が概念的になっていって、主人公の顔から生気が失われていって、こいつの名前霧亥っていうんだけど、物語が中盤にもなると霧亥がほとんどしゃべらなくなって延々と無言で全身黒装束のサイボーグクリーチャーを職業的淡白さで殺し続けるサイボーグへと生まれ変わる。そして、最後の数巻は、静謐が支配する世界で脳の機能がほとんど失われて廃人同然となった前述のクールビューティーお姉さん(この時には肉体は何度も入れ変わってアフリカで飢餓状態に陥ったサイボーグじみた外見になっている、何を言ってるかわからねーと思うが)が、誰のためでもない都市を内蔵されたプログラムに従って永遠に建設し続けるロボットの傍らで、何年も、何十年も、何百年も、霧亥を待ち続ける、そんな静寂と停滞を僕ら読者は延々と噛みしめることになる。この時に僕の胸の中に表象した感情は、おそらく、天空の城ラピュタで、バズ―とシータがついにラピュタにたどり着いたときの、あのときに感じたそれよりも鮮烈なもので、読後10年も経過したのに、たいていの漫画のことは読んでから一年ぐらいしたらすっかり綺麗に忘れてしまう僕でも、ハッキリと思い出せる。

 まあそれ以外にも、この漫画はヤバくて、たとえば1ページ進んだら、漫画の中の世界は数百年経過していて、ただ感情を失った霧亥が淡々とクリーチャーを殺す情景だけがその時間的に飛躍したコマを接続している。そしてこれが最大の肝で、作中のテクノロジーや、なぜこのようなディストピアが実現してしまったのかという謎を懇切丁寧に説明してくれる存在が一切存在しなくて、読者はコマに描き出された情報だけでそれらを読み解かなければならない。こんな不親切な漫画は他に存在しないと思う。

だけど、それゆえに中毒性があって、今ちょうど新装版も出ていて良い時期だし、この漫画の信者が増えて悲願の地上波アニメ化が実現してくれることを期待しもって、僕はこの漫画を皆さんに勧めます。